「八重山の唄者」
初めて沖縄に行ったのが、一九九六年五月。
一度でとりこになり時間と金をつくってはその後も何度か出かけている。
すぐ、店のメニューにもゴーヤチャンプルーや泡盛が並び、BGMも沖縄の曲が流れることが多くなった。
そうなると不思議なもので、周りにも沖縄を好きな人が集まりだし、沖縄のミュージシャンからも出演の話が舞い込むようになった。
同じ沖縄でも西表島周辺を八重山地方といい、古くから伝わる独特の民謡がある。
方言も沖縄本島とはかなり違い、例えば本島では「いらっしゃい」を「メンソーレ」というが、八重山では「オーリタボーリ」という。
一度、生の八重山民謡を聴いてみたいとつねづね思っていたら、東京の友人からうれしい話が舞い込んできた。
彼はプロドラマーを目指して上京し、多くのミュージシャンのサポートをしている。
今回彼が一緒に道内を回りたいと言ってきたのが、八重山民謡の第一人者「大工哲弘」。
八重山民謡の世界では誰ひとり知らない者のいない唄者(うたしゃ)で、九八年には沖縄県無形文化財保持者に指定された。
民謡の世界だけにとどまらず、ジャズやロックのミュージシャンとも数多くセッションをし、世界各地をまたにかけ活躍を続けている。
思い続けて動いていれば願いは必ずかなうものと感じた。
大工さんのツアーは5月の中ごろに決まった。
春の芦別に響く八重山民謡。
その日一日は沖縄気分だ。
オーリタボーリ、大工さん。